書店には翻訳関連の本が多数並んでいますが、韓国語翻訳の専門書はあまり見かけません。しかし、韓国語の書籍では日韓・韓日翻訳に関する本が意外と豊富です。特に、韓国の書籍であるため、日本語を韓国語に翻訳する内容が多いのが特徴です。これらの本には翻訳のノウハウがたっぷり詰まっており、語学力を向上させるのにも役立つため、とてもおすすめです。この記事では、その中から特におすすめの5冊をご紹介します。
(2025年2月5日、一部絶版書籍を削除し、再構成しました。)
일본어 번역 스킬 (강밥화, 손정임)
韓国では非常にメジャーで、「バイブル」ともいえる日韓翻訳のトレーニング本があります。それが『일본어 번역 스킬』です。日本語と韓国語は語順が似ているため、学びやすい言語だといわれていますが、実際の翻訳作業となると直訳は通用しません。また似て非なる表現も多く、どう訳すべきか悩む表現が多々あります。そんなときにこの本が大いに役立ちます。
本書は、基礎から実務で応用できる内容までをカバーした4つのパートで構成されています。おすすめは、PART3とPART4です。
PART3では、翻訳の際に一筋縄ではいかない難しい表現が取り上げられ、それをどのように日本語から韓国語へ翻訳するかが詳しく解説されていて、翻訳のテクニックを磨くのに最適です。
例えば、「彼はお金に厳しい人なのできちんと貯金をします。」という日本語を韓国語に翻訳してみましょう。
「厳しい」と聞くと、多くの人は『엄격하다』という単語を思い浮かべるかもしれません。そのため、次のように翻訳する方が多いでしょう。
그 사람은 돈에 관해서 엄격한 사람이라 철저히 저축을 합니다.
この訳でも通じますが、単語を少し工夫してみると、より自然な表現が可能です。
그 사람은 금전 관리를 잘해서 철저히 저축을 합니다.
こうすることで、ニュアンスが柔らかくなり、意味も正確に伝わります。
また、次のように訳す方法もあります。
그 사람은 돈에 관해서 까다로운 사람이라 철저히 저축을 합니다.
こちらは「お金に対して細かい性格」というニュアンスが強調され、本当に「お金にうるさい」印象になります。
必ずしも「厳しい」=『엄격하다』ではなく、文脈に応じて適切な単語を選ぶことが重要です。このようなさまざまな表現方法が本書で紹介されており、非常に参考になります。
PART4では、新聞記事や小説の一節などを翻訳する実践練習が100ページ以上にわたって収録されています。本書に沿って日本語を韓国語に翻訳していくことで、自然な韓国語表現を身に付ける手掛かりを得ることができます。また、模範解答を使って反対に韓国語を日本語に訳す練習も可能で翻訳トレーニングに役立つ内容です。
日本では、こうした韓国語翻訳のワークブック的な書籍はほとんど見かけないので、本書は非常に貴重です。
ちなみに、先日僕は神保町にある韓国書籍専門店「チェッコリ」でこの本が陳列されているのを見かけました。日本でも比較的簡単に手に入るので、気になる方はチェックしてみてはいかがでしょうか。
번역투의 유혹 일본어가 우리말을 잡아먹었다고? (오경순)
この本は、翻訳家であり、高麗大学などで講師を務めている 오경순(オ・ギョンスン) 先生が書かれた本です。オ先生は、可読性を重視した翻訳や、번역투(訳文に見られる不自然な表現) の研究を行っており、小説翻訳家としても高い評価を受けています。本書は小説を例題にしているため、主に出版翻訳者向けの内容となっていますが、映像翻訳や産業翻訳を目指す方にも役立つ一冊です。
韓国語は日本語と似た点が多いがゆえに、日本語の影響を受けやすく、また日本語的な表現を自然と取り入れやすい言語です。そのため、韓国語の中に日本語的な表現が「しれっと」紛れ込んでいることが少なくありません。しかし、翻訳の際には正しい韓国語表現を使うべきだと、著者は強く訴えています。
本書のサブタイトルである 『일본어가 우리말을 잡아먹었다고?(日本語が私たちの言葉を飲み込んだって?)』 からもわかるように、日本語っぽい韓国語が非常に多く使われている現状を浮き彫りにし、正確で自然な韓国語を目指す翻訳の重要性を示しています。
例えば、日本語で当たり前に使われる「受け身」や「使役」の表現について考えてみましょう。「~される」や「~させる」に相当する表現は韓国語にも存在しますが、日本語ほど頻繁には使われません。
たとえば、「ミンスが問題を起こして退学させられた。」という文は使役と受け身が組み合わさった表現ですが、これを韓国語に直訳することは難しいです。以下のような訳が考えられます。
민수가 문제를 일으켜서 퇴학하게 되었다.
(ミンスが問題を起こして退学することになった。)
민수는 자신이 일으킨 문제로 인하여 퇴학 조치를 당했다.
(ミンスは自分が起こした問題により退学処分を受けた。)
このように、韓国語では受け身や使役を直接表現するよりも、状況や結果を説明する形が多いのが特徴です。ただし、最近では使役表現「~시키다」が以前よりも使用されるようになり、次のような表現も可能になっています:
학교가 문제를 일으킨 민수를 퇴학시켰다.
(学校が問題を起こしたミンスを退学させた。)
一見自然に見えるこの表現ですが、これは実は번역투(訳文的な不自然な表現) です。原文の日本語の影響を強く受けてしまった結果、韓国語としてはやや不自然になることがあります。
翻訳作業では、原文の言語に引っ張られて「なんとなく意味は通じるけれど、不自然な訳文」になることがよくあります。この本では、そうした問題に焦点を当て、日本語と韓国語それぞれの特徴を解説しています。また、実践練習を通じて自然で正確な表現を身に付けることができるので、翻訳者だけでなく、語学学習者にも非常に役立つ内容です。

ちなみに、私は以前 한겨레교육 というスクールでオ・ギョンスン先生の小説翻訳クラスを受講したことがあります。講義では、日本語と韓国語それぞれの特徴を深く学ぶことができ、非常に勉強になりましたし、번역투を掘り下げることで翻訳の奥深さを再認識し、私自身も日本語っぽい韓国語文訳が確実に減りました。
下の翻訳スクールの記事でも紹介していますので、興味がある方はそちらもぜひご覧ください。
번역자를 위한 우리말 공부역자를 위한 우리말 공부 (이강룡)
韓国語をより深く理解し、正しく表現したい方におすすめの一冊です。正確な意味を伝えることで理解しやすくなり、簡潔な翻訳文に仕上がるノウハウが詰まっています。
きれいで自然な文章を書くための手がかりをつかみ、間違いを減らし、無駄をなくすコツを学べます。また、文章の組み立て方を意識しながら、整った韓国語の表現を身につけることができるでしょう。
翻訳はもちろん、TOPIKの作文対策にも活用できる実践的な内容です。
무면허 번역가 9년째, 러브콜이 너무 많아 힘듭니다 (정성희)
こちらの本は、翻訳のトレーニングというよりも、翻訳家に必要なマインドや姿勢、技術などが紹介されている一冊です。実際に翻訳者として活動している方よりも、これから翻訳者になりたいと考えている方に向いていると感じました。この本を通じて、翻訳者の仕事の全体像や翻訳の種類、必要とされる技術や心構えについて知ることができます。
韓国で活躍するフリーランス翻訳家が書いた本なので、特に日韓翻訳に関する内容ではありませんが、韓国内の翻訳に関する情報を集めるには有益だと思います。韓国で翻訳家を目指している方には、読んでみる価値があるかもしれません。
4컷 Cartoon 한국어 의성어・의태어 (이경은, 최희)
私は漫画の翻訳にもかなり関わってきたので、擬音語や擬態語 の扱いは避けて通れない課題でした。これらの翻訳は意外と厄介で、辞書を調べてもニュアンスがつかみにくい場合が多々ありました。
擬音語や擬態語に関する書籍は日本でも多く出版されていますが、個人的には韓国で説明されている書籍のほうが、日本語で説明されたものよりも正確なニュアンスを理解しやすいと感じています。韓国語の視点で説明されているため、翻訳作業に直結する情報が得られるのが利点です。さらに、漫画を使った実例が豊富に紹介されているので、実践的でわかりやすいのもこの本の魅力です。
擬音語や擬態語に苦労している翻訳者や、これからウェブトゥーンなどの漫画翻訳を始めたい方には、こうした書籍を活用するのがおすすめです。実際の翻訳に役立つ知識を得られること間違いありません。
韓国の書籍を購入するには?
本は韓国に足を運んだ際に購入するのがベストですがそうは言ってられませんよね。
そんな場合はこちらの『韓国の本を国内で買う 5つの方法』を参考にしてください。
今回は日韓翻訳の仕事に役立つ本を紹介しました。私自身、翻訳歴は5年以上になりますがさまざま知識を本から吸収出来て、今も翻訳関係の本は常日頃から読んでいます。これからもいい本があったら紹介していきたいと思います。
本日も最後までご覧いただきありがとうございました。






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