ホンデや新村からもほど近い、ソウル市マポ区シンス洞(서울 신수동)の小さなカフェ「クデフェコーヒー(구대회커피)」。看板には「コーヒーテイナー(커피테이너)」と書かれています。バリスタであり、同時にエンターテイナー。ここで働くのは、コーヒーを淹れるだけでなく、人々に人生の楽しさを伝えることです。その人物こそ、ク・デフェ(구대회)さんです。
平凡ではなかった出発
1975年、忠清南道泰安のごく普通の家庭に生まれたク・デフェさんは、幼少期から特別な環境に恵まれたわけではありません。地元の学校を経て、延世大学の経営学科へ進学。卒業後は大手証券会社や中堅グループ系の投資アドバイザリー会社で働き、順調にキャリアを積んでいきます。総帥の信頼を得て、超高速で昇進する日々。しかし、見た目には順風満帆でも、彼自身の心は満たされていませんでした。
「キャリアは順調でも、人生は味気なかった」
その思いが、彼を新たな旅路へと駆り立てます。2005年、仕事を辞め、世界一周の旅に出たのです。
世界一周が教えた「コーヒーの価値」
初めての旅は8か月。中国、ネパール、インド、イタリアなどを巡り、世界各地の文化や人々と触れ合いました。この旅で人生の意味を考え直す中、運命的に出会ったのがコーヒーでした。帰国後は再び金融業界に戻りますが、充実感を得られず、再び2回目の世界一周へ(2009年)。今度のテーマは「コーヒー」です。夫婦で、1年2か月かけて35か国を巡り、各地のコーヒー文化を体験しました。

「コーヒーの味わい方、楽しみ方には国ごとに特徴がある。見て、触れて、体験することで初めて理解できることがある」。この言葉が、彼のバリスタ人生の原点となりました。
日本での挑戦と技術習得
世界一周の旅で得た情熱を胸に、若きバリスタとして日本に渡ります。ハンドドリップの本場である日本では、東京、京都、長崎などの有名カフェを巡り、現地の名人たちに自らの腕を試す挑戦をしました。ブレンドから焙煎まで自ら手がけたコーヒーを提供し、互いの味を比べる「真剣勝負」。


特に東京の老舗カフェ「Cafe de l’Ambre」では、1974年産のキューバ産コーヒーを目の前にし、技術の差を痛感します。ここで学んだのは、単なる技術ではなく、時間をかけてコーヒーと向き合う姿勢。まさに「待つことの美学」です。
ダッチコーヒーへのこだわり
帰国後に開いた「구대회커피」の代表メニューは더치커피(ダッチコーヒー)。7時間以上かけて1滴ずつ水を落とす抽出法で、苦みが少なくまろやか。さらに48時間以上低温で熟成させ、香りを最大限に引き出します。

彼のコーヒー哲学は、人生そのもの。ゆっくりと時間をかけて楽しむこと、待つことの価値を教えてくれます。店内には座席は少なくテイクアウト中心ですが、小さなスペースでも、訪れる人々はその味と心地よい体験に魅了されます。2025年秋に現在の店舗の近くにさらに大きい店舗をオープンさせる予定だとの。
高品質でも低価格の挑戦
クデフェコーヒーでは、アメリカーノを1杯3,000ウォンで提供しています。自家ロースティングまで行っているカフェでこの値段はなかなかお目にかかれません。そして利益はほとんどないと言います。それでもこの価格にこだわる理由は明確です。

「日本や韓国のコーヒーは高すぎる。多くの人に本物の味を楽しんでもらいたい」
彼の方針は、薄利多売。品質を落とさず、多くの人に喜んでもらうため、毎日朝7時から夜8時まで営業しています。口コミで広がった評判は、近隣はもちろん、中国からの観光客まで集めるほどです。
コーヒーと文化の架け橋
「コーヒーテイナー」と自称するク・デフェさんは、カフェ運営だけでなく、ポッドキャスト「커피를 읽어주는 남자(コーヒーを語る男)」でも活動しました。コーヒーを通じて文化や知識を伝えることにも熱心です。さらに次の目標として、ダッチコーヒーを携えてヨーロッパを巡る旅を計画しています。

ク・デフェコーヒーを味わおう

クデフェコーヒーは地下鉄6号線ガンフンチャン駅(광흥창역)、または京畿中央線のソガン大駅(서강대역)駅、地下鉄2号線の新村駅(신촌역)からも徒歩圏(約15分)です。
営業時間 8:00~18:00(臨時休業日あり) ネイバーを参照
主なメニュー
アメリカーノ 3,000ウォン
ダッチアメ 3,500ウォン
アクセス
人生の経験、旅、学び、そして技術をすべてコーヒーに注ぎ込む구대회さんの物語は、まさに一杯のコーヒーに込められた「人生の味わい」を教えてくれます。


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