韓国文学やノンフィクション作品が日本でも注目されるようになってきた昨今。翻訳者として日韓の出版業界に触れる中で、両国の本づくりや出版事情には大きな違いがあることに気づきます。本記事では、日韓の出版業界の違いを6つのポイントに分けてご紹介します。これを知ることで、日韓の本の世界がもっと面白く見えるはずです!
翻訳出版が活発な韓国
韓国では1年間で刊行される翻訳本が7~8万部(数年前のデータです)といわれていて、発売される本の3割ほどを占めています。そのくらい翻訳書の依存度が高く、更に翻訳書のうち4割が日本のものです。今後、日本の書籍の比率は徐々に下がっていく傾向にありますがそれでも高い比率を誇り、韓国国内での需要は非常に高いといえます。
書籍の発掘は著作権エージェントの活動が非常に活発的で8割をエージェントが発掘し出版社に売り込んでいるのだとか。一方で翻訳家の売り込みによる翻訳本の発行は2割にも満たず、翻訳家個人での売り込みは厳しい状況にあります。
一方の日本では翻訳本の比率が全体の10%と韓国に比べると相当低い数値ですが、韓国書籍に関しては今後の益々の重要が期待されています。また、知り合いのエージェント関係者の話では日本に本を売り込む際、レジュメの作成を翻訳者に依頼するケースが多々あるそうで、韓日翻訳者の需要が高まっているとのことです。
書店の役割と流通の違い

韓国ではオンライン書店や電子書籍が主流となっており、リアル書店の数が減少しています。その理由の1つにオンラインとオフラインの価格に差があることがあげられます。オンラインでは定価の1割で販売されているのが基本ですし、15,000ウォン(1600円)程度買えば、送料もかかりません。さらにクレジットカード割引などもあり、この価格の差とわざわざ書店に出向く必要もないということが書店の減少に影響しています。
韓国では、インフルエンサーがSNSで本を紹介すると一気に売れることも少なくありません。オンラインランキングが売上を左右するため、プロモーション活動がデジタル中心になりがちです。
一方、日本では数が減少傾向にあるとはいえ、全国各地にあるリアル書店が依然として重要な役割を担っています。
日本では書店員が選ぶ「本屋大賞」など、リアル書店を基盤とした企画が依然として読者に影響を与えています。この「店頭販売を重視する文化」が日本特有の特徴と言えるでしょう。韓国には賞としての文学的評価を授与するイ・サン文学賞(이상문학상)などがあるものの日本ほど売り上げを大きく左右するものではありません。
翻訳出版のスタイルの違い
韓国では以前から海外文学や翻訳書が多く出版されており、日本の作品も人気があります。村上春樹や吉本ばなな、東野圭吾といった作家は韓国でも根強い読者を持っています。
一方、日本では最近になってようやく韓国文学やノンフィクションが注目されるようになりました。『82年生まれ、キム・ジヨン』や『若い読者のためのユング心理学講義』(イ・ソンジン)などが代表例です。
ただし、日本で韓国文学を翻訳出版する際は、「内容が日本の読者に受け入れられるか」という慎重な検討が行われるため、出版される本のジャンルが限られがちです。この点が日韓の出版事情の違いをよく表しています。
本のジャンル別売上の違い
韓国では自己啓発やエッセイが強い人気を誇るのに対し、日本では小説や漫画が安定した需要を持っています。
例えば、韓国で大ヒットした『私は私のままで生きることにした』(キム・スヒョン)は、若者を中心に「自分らしく生きる」メッセージが共感を呼び、100万部以上を売り上げました。一方、日本ではストーリー性のある小説やコミックが引き続き幅広い年齢層に支持されています。
韓国では「個人の体験やメッセージに共感する」本がトレンドになりやすいのに対し、日本では「物語を楽しむ」文化が根強いのが特徴です。
出版スピードの違い
韓国の出版はとにかくスピーディー!新刊の企画から発売までが非常に速いのが特徴です。僕も訳文の脱稿をしてからふた月経たないうちにひと月ちょいで本が刊行されたことがありました。
出版社はまず初版を小部数(1500~2000部程)で発売し、市場の反応を見ながら増刷や改訂を行うという柔軟なスタイルを取ります。たとえば、韓国でベストセラーになった『82년생 김지영(82年生まれ、キム・ジヨン)』(チョ・ナムジュ)も、発売直後の口コミで爆発的に広がり、短期間で増刷が続きました。
一方、日本では出版準備に時間をかけることが多く、初版でしっかり作り込む傾向があります。こうした違いは、本に対するマーケットのアプローチの違いを象徴しています。
作家との関係やプロモーションの違い
韓国では作家がSNSやトークショーを通じて読者と直接コミュニケーションを取ることが一般的です。サイン会やオンラインライブ配信など、作家自身がプロモーションに積極的に参加します。
日本では、出版社がプロモーションの主導権を握ることが多く、作家は執筆に専念する傾向があります。この違いは、読者との距離感や作家の役割の違いに影響を与えています。
まとめ 日韓の出版業界を理解して翻訳に活かす
日本と韓国では出版文化や市場の特性が大きく異なりますが、それぞれの良さがあります。この違いを理解することで、韓国の本を日本に紹介する際に、より効果的な企画や翻訳が可能になると思います。
今後も日本で韓国文学やノンフィクションが注目される中で、日韓の出版業界を比較しながら新たな視点を見つけていくことが重要です。
本日も最後までご覧くださいましてありがとうございました。






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