本の翻訳は単なる言葉の置き換えではなく、文化や文脈を深く理解しながら進める創造的な作業です。今回は、私が角川まんが学習シリーズ「世界の歴史」(ヨーロッパの世界進出 一六〇〇〜一七九〇年)を韓国語に翻訳した経験をもとに、具体的な翻訳の手順とスケジュールを解説します。
私の場合は日→韓翻訳でしたが、流れは逆の韓→日翻訳にも応用できます。
*著作権等で書籍の内容、訳文等は非公開です。
翻訳の流れとポイント
私の場合、漫画本の翻訳は3週間もあれば十分ですが、この本では年表やコラムもあり、ボリュームがかなり多めでした。シリーズ20巻を5人の翻訳者が4巻ずつ担当するため、用語の統一が必要で、かなりタイトなスケジュールでの翻訳作業となりました。
準備段階
準備段階1:原書の読み込み、データの確認、特筆事項確認(初日)
『世界の歴史』の翻訳では、歴史的な背景や地名、人名の表記が重要でした。翻訳の信頼性を高めるため、とにかく原書をじっくり読み、全体の構成や筆者の意図を把握しました。
また、送られてきたPDFファイルやInDesignファイルの確認を行い、5人の翻訳者が共同でシリーズを完結させるための共有事項や翻訳ルールを確認しました。
準備段階2:スケジュールを立てる(初日)
どんな仕事でも締め切りを守ることは基本中の基本です。今回の翻訳中は他の業務がほとんど入らなかったものの、急な依頼が発生する可能性も考慮し、以下のようなスケジュールを組みました。
作業スケジュール(4週間、土日を除く)
1日目:原書の読み込み、データの確認、特筆事項確認、スケジュール作成
2–13日目:一次翻訳、資料検索、用語統一チェック
14–17日目:二次翻訳、編集者との会議、追加資料検索
18–19日目:InDesign入力、三次翻訳(入稿準備)
20日目:予備日
続いて翻訳の具体的な手順に移ります。
一次翻訳、資料検索、用語統一チェック(2–13日目)
準備が整ったら、いよいよ翻訳作業を開始します。Wordファイルで作業を進めていきます。全体が200ページ強で、漫画以外にコラムや年表も含まれていたため、1日あたり20ページ弱を翻訳する計算でした。ただし、参考資料の確認や書籍の検索も含めると、1日10時間以上作業していました。
本の大まかな本の構成は以下の通りです。
「世界の歴史」(ヨーロッパの世界進出 一六〇〇〜一七九〇年)
もしも大国の君主たちがサッカーチームの監督だったら…!?
第1章 絶対王政と激化する覇権争い
第2章 東インド会社、アジアへ
第3章 アメリカ植民地と奴隷貿易
第4章 ロシア帝国の発展
専門資料の収集:
インターネットだけでは不十分で、歴史関係の資料は図書館を活用しました。特にロシアの歴史に関しては教科書だけでは不十分だったため、図書館に3回足を運び、必要な本を借りて対応しました。
翻訳時の注意点:
韓国の読者が理解しやすいよう、歴史用語や文脈を現地の文化に合わせて調整しました。また、タイトなスケジュールの中では細部の調整は後回しにし、不明点は二次翻訳で解決することにしました。
オノマトペの翻訳:
漫画本特有の課題として、オノマトペの翻訳にも多くの時間を割きました。銃声や戦争の効果音など、繰り返し使われる表現についてはエクセルでリストを作成し、統一感を持たせる工夫をしました。
用語リストの作成:
専門用語や固有名詞の訳を統一するため、スプレッドシートを共有し、翻訳者間でリアルタイムに情報を更新しながら作業を進めました。
二次翻訳、編集者との会議、追加資料検索(14–17日目)
二次翻訳では文章の流れが自然かどうかを確認し、必要に応じて修正を行いました。擬音語や擬態語が不自然でないかも細かく見直しました。この段階で編集者と会議を行い、不明点の解決や追加資料の確認も実施しました。

三次翻訳、InDesign入力(18–19日目)
二次翻訳が終わったら、InDesignに訳文を入力する作業に移ります。勤めていた出版社ではこの作業は翻訳者の仕事範囲内でした。セリフが長すぎる部分の微調整やレイアウトの確認を行い、最終的な仕上げをしました。
そして すべての翻訳作業が終わったら編集者に入稿して終了です!
そして次なる本『世界の歴史10』の翻訳へ。
本の翻訳は、単なる言語の変換ではなく、文化や文脈を深く理解しながら進める創造的かつ高度なプロセスです。本記事では、漫画シリーズ『世界の歴史』を韓国語に翻訳した実例を基に、具体的な翻訳の流れやスケジュールについて解説しました。
本日も最後までご覧いただきありがとうございました。




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