翻訳本ができるまでの過程は、まず著作権エージェントが原書の著作権を持つ出版社や作家と交渉し、翻訳権を取得することから始まります。その後、翻訳権を購入した出版社が翻訳者を選定し、翻訳作業が進められます。翻訳が完成すると、編集、デザイン、校正といったプロセスを経て出版されますが、この一連の過程において、第1段階で大きな役割を果たしているのが著作権エージェントです。
今回はその著作権エージェントの仕事をご紹介します。
(内容を一部修正加筆しました。2025年2月6日)
著作権エージェントとは
「著作権エージェント」または「著作権代理人」とは、創作者から著作権行使に関する権利を委任され、著作権の仲介、保護、侵害防止などの関連業務を遂行する人、業者を意味します。
ベルヌ条約と著作権エージェントの関係
ベルヌ条約の概要
1886年に成立した国際条約で、1996年にTRIPS協定との整合性が強化され、著作権の保護基準が国際的に統一されました。
条約加盟国では、著作物は原則として登録や申請を必要とせず、自動的に著作権が認められます(自動保護の原則)。
著作権エージェントの役割
著作権の管理: 原書の著作権者(作家や出版社)の権利を保護し、他国での翻訳権や出版権の販売契約を行います。
国際交渉: ベルヌ条約に基づき、著作権が各国で適用されるため、エージェントは国際的な権利交渉を円滑に進めます。
ロイヤリティ管理: 翻訳本の売上に応じた収益分配を適切に処理し、著作権者に還元します。
翻訳出版の促進
ベルヌ条約により、加盟国間で著作物の保護が保証されているため、エージェントは安心して翻訳権を取引できます。これにより、国際的な文化交流や市場拡大が促進されています。
著作権エージェントは、ベルヌ条約の原則を活用しながら、作家の権利を守りつつ、世界中の読者に優れた著作物を届ける橋渡し役を担っています。
著作権エージェントの主な仕事
著作権エージェントは、著作権や契約に詳しい専門家であり、作家や出版社が新しい市場で安全かつ効率的に作品を広める手助けをしています。
ざっくり説明すると以下のようにして翻訳書ができあがります。
~ベストセラーの翻訳出版までの流れ~
1 エージェントが原書の権利を保護し、翻訳権の購入希望者を探します。
2 海外の出版社が翻訳権を購入し、翻訳者を選定。
3 翻訳・編集を経て、翻訳本が出版。
4 翻訳本の売上に基づき、エージェントがロイヤリティを収集して原著作権者に分配。
著作権エージェントは、著作権や契約に詳しい専門家であり、作家や出版社が新しい市場で安全かつ効率的に作品を広める手助けをしています。
そして、以下のように翻訳書ができます。
著作権の保護と管理
作家や出版社から著作権の管理を委託され、作品が不正に使用されないようにします。
他国での著作権保護が適用されるよう、ベルン条約などの国際ルールを活用します。
翻訳権・出版権の販売
原書(元の本)の翻訳権や出版権を購入したい出版社と交渉します。
契約内容を調整し、翻訳本の出版が適切に行われるようサポートします。
例: 翻訳権の使用期間、ロイヤリティ(売上の分配率)など。
契約と権利交渉
著作権契約を作成し、出版社や翻訳者と調整します。
契約内容には、作品の使用範囲、翻訳や出版に関わる条件などが含まれます。
収益の管理と分配
翻訳本の売上に基づいてロイヤリティを収集し、原著作権者(作家や出版社)に分配します。
国際マーケティング
原書の魅力を他国の出版社にアピールし、翻訳権の購入を促進します。
海外のブックフェア(例: フランクフルト・ブックフェア)に参加してネットワークを広げます。
日本ではかつてのようなブックフェアはなくなってしまいましたが、毎年11月に東京版権説明会が行われています。

著作権エージェントは常におすすめ本の発掘に大忙し
著作権エージェントは、作家や出版社の代理として、優れた書籍を発掘し、国内外での出版権交渉を行うプロフェッショナルです。そのため、エージェントは常に新しい才能や話題性のある作品を探し求めています。原書を読むだけでなく、書評や市場トレンドを分析し、翻訳出版に適した本を見極めることも重要な仕事の一部です。また、出版社や翻訳家に魅力を伝えやすい本を選ぶため、幅広い知識と鋭い感性が求められます。ブックフェアや業界イベントに参加して作家や出版社と直接交流し、権利交渉を進めるなど、その活動は非常に多岐にわたります。良い作品を見つけるために、エージェントは今日も目を光らせ、大忙しの毎日を送っています。
著作権エージェントは翻訳家が出版社に売り込みする時のライバル!?
出版翻訳者にとっての大切な仕事のひとつに翻訳したい、売り出したい本を出版社に売り込むレジュメの作成がありますが、著作権エージェントも出版社に本の売り込みをしていますよね。だとすると著作権エージェントは出版翻訳家とっての競争相手なのか、という感じにも思えるのですが実際はどうなのでしょうか。
著作権エージェントは翻訳家にとって必ずしもライバルや敵ではありません。むしろ、エージェントと翻訳家は異なる役割を担い、場合によっては協力関係を築くこともあります。ただし、両者が似たような目的を持つことがあるため、状況によっては利益が競合する可能性もあります。
翻訳家が直接交渉を試みる場合:
著作権エージェントを介さず、翻訳家が自ら出版社に作品を売り込む場合、エージェントと競合することになります。これは、翻訳家が翻訳権を自ら取得して出版社と契約を結びたい場合などです。韓国の場合訳書の企画提案の8割はエージェントによるもので、翻訳家が自ら企画して発行までもっていくものは全体の2割にも満たないのが現状です。
エージェントが翻訳家を決める場合:
エージェントが書籍の企画を進める時点で翻訳家にレジュメの作成を依頼する場合があります。この場合は協業という形になります。韓国の本を日本に企画する際はこのパターンをとるエージェントも多く、ウィンウィンになるのではないでしょうか。
翻訳者とエージェントの大きな違いは?
出版社におすすめ本を売り込むという点では共通しているものの、翻訳者と著作権エージェントの間には大きな違いがあります。翻訳者が一冊入魂でじっくりと作品を読み込み、深い理解をもとにレジュメの作成に取り組むのに対し、著作権エージェントは多くの本を扱い、多数の取引先を抱えています。そのため、一冊一冊を詳細に読み込む時間が限られているのです。
エージェントが出版社におすすめするの書籍を紹介は冊子などの資料で提供されますが、それだけでは本の内容を十分に伝えることができず、検討材料として不足する場合もあります。そのため、エージェント自体が翻訳者にレジュメの作成を依頼することも少なく、また翻訳者が独自に企画した書籍が出版社に採用されるのでしょう。
ここまで著作権エージェントの仕事と翻訳者との関係についてみてきました。出版者への売り込みの部分では個人の翻訳家ではかなわない部分が多々ありますが、翻訳家だから探せる珠玉の1冊というのはあると思います。人気の本は既にエージェントに目をつけられている場合が多いので、それほど有名でない作家の本から狙ってみるのも一つの手段です。著作権エージェントと翻訳者がうまく共存できる関係であってほしいと切に願います。
本日も最後までご覧いただきありがとうございました。


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