本を翻訳してみよう! 翻訳の流れと情報検索のポイント

韓国語翻訳

出版翻訳は、小説やエッセイ、ノンフィクションなど、読者に深い印象を与える「作品」を他言語に移し替える高度な作業です。本記事では、出版翻訳を進める際の具体的な入稿までのプロセスと翻訳作業時に欠かせないリサーチ作業(情報検索)のコツを解説します。

好きな本を翻訳してみよう!

出版翻訳を目指す方の場合、好きな本を模擬翻訳して、全体の流れや翻訳というものがどのようなものかを知ることが大切です。選んだ本が日本で需要があるのか、出版社に売り込むためのレジュメ作成などのことはひとまず考えず、自分の興味のある本を翻訳して、翻訳を体感してみましょう。

出版翻訳を目指す方の場合、翻訳の練習するにあたり、以下の勉強法も並行して行ってみると効果的です。

プロの翻訳を読む : 既存の翻訳本を読み、原文と比較して翻訳の工夫を学ぶ。
翻訳講座を受講する : 専門家から直接指導を受ける。
翻訳コンテストに挑戦 : コンテストを通じてスキルを評価してもらう。

大まかな流れ

私は以下のような手順で翻訳作業を行っていきます。

本の読み込み(一部はこの時点でリサーチ)

 → 1次翻訳&リサーチ → 2次翻訳&細かいリサーチ

 → 3次翻訳(フィードバックをもらう)→ 入稿

実際に私が書籍(学習漫画)を訳した時の流れは以下の記事でも詳しく説明しています。

本の内容を深く理解する

ここからは本を訳す際の流れとポイントを紹介していきます。

翻訳を始める前に、先ずは原書の内容やテーマ、著者の意図を理解することが重要です。
特に出版翻訳では、単に文章を訳すだけでなく、作品全体の「雰囲気」や「メッセージ」を正確に伝える必要があるからです。

具体的な手順

1 全体を通読し、テーマや構成、文体を把握する。
2 主要な登場人物や出来事を整理してメモを取る。
3 著者の背景や執筆の意図をリサーチする。

原文の文体、流れを意識した翻訳(1次翻訳)

出版物は多くの場合、文体が洗練されており、読者に特定の感情やイメージを与えます。そのため、文体に合った日本語にすることが求められます。

文体の種類と翻訳例
硬い文体 : 専門書や歴史書 → 正確で論理的な日本語を使う。
軽快な文体 : エッセイやユーモア作品 → リズム感のある日本語にする。
文学的文体 : 小説や詩 → 比喩や美しい表現を工夫する。

ポイント

著者の「声」を意識し、その声を日本語で再現する方法を考えます。

直訳はしない

日本語で読んでも違和感のない自然なリズムを意識し、一文ごとに訳さず、前後の流れを把握しつつ翻訳していきます。韓国語の表現をそのまま直訳すると流れが不自然になる場合が多々あります。前後の文脈をしっかり把握して、そのニュアンスを自然な日本語の表現にあるように訳していきます。

具体例
韓国語: 그녀는 그 소식을 들었을 때 너무 기뻐서 하늘을 나는 기분이었다.
直訳: 「彼女はそのニュースを聞いたとき、あまりにも嬉しくて空を飛んでいる気分だった。」
自然な翻訳: 「そのニュースを聞いて彼女は天にも昇る気持ちだった。」

背景や文化を適切に補足する

原文の中には、翻訳先の読者にとって馴染みがない文化的な要素が含まれることがあります。これらを適切に訳し、必要に応じて補足や注釈を加えることが求められます。

例:
文中に치맥(チメク)がでてきた *で説明→ 

*チメク(치맥)とは、チキン(치킨)メクチュ(맥주、ビール)を組み合わせた韓国の造語で、「フライドチキンとビールの組み合わせ」を指す。韓国では定番の飲食文化で、友人や同僚と一緒に楽しむことが多い。

ことわざや慣用句 → 日本語に近い意味の表現に置き換えるか、原文を活かして注釈を付ける。

わからない語句やフレーズは徹底的に調査する

翻訳作業では、文脈やニュアンスを正確に理解することが必要不可欠です。しかし、以下のような課題に直面することも多いです。

韓国語の専門用語や慣用表現、流行語がわからない
文脈に合う適切な訳語を選べない
原文に含まれる文化的な背景情報が不足している

こうした課題を解決するためには、信頼できる情報を素早く見つけるリサーチスキルが重要です。

インターネットで情報検索する際のメリットと注意点

インターネットを使った情報検索は、韓国語のスラングや流行語、トレンドを調べる際に非常に有効です。また、辞書だけでなく、専門書、記事、学術論文など、さまざまなリソースをオンラインで無料または低価格で利用できるため、情報の幅を広げることができます。

メリット

スラングや流行語、専門用語の確認が容易。多様なリソース(辞書、専門書、記事、論文など)にアクセスでき、即時に情報を得られる

デメリット

しかし、インターネット上の情報には信頼性に欠けるものも多く、特にブログなどでは誤った情報や偏った視点が載っていることがあります。そのため、信頼できる情報源を選ぶことが非常に重要です。私は、新聞記事など信頼性が高いとされるリソースを優先し、ブログは基本的に参考にしないようにしています。

辞書を駆使する

辞書サイトや専門用語集、オンライン翻訳ツール(例: NAVER辞典、Google翻訳)を活用し、基本的な意味や用法を確認するのもありですが、正確性には欠けるので、できたらちゃんとした辞書を使うことをお勧めします。

オンラインであれば국립국어원 표준어국어대사전などを使うといいでしょう。

韓国語の標準語を網羅した辞典で、オンライン版も提供されています。
語彙、成句、方言の解説が充実しており、専門的な翻訳にも役立ちます。
最新の韓国語表現や用例も反映されており、日韓翻訳者にとって非常に信頼性が高いリソースです。

また、定番ではありますが『韓日辞典』 (小学館)も政治・経済・文化・ITなどの分野を中心に新語が積極的に採用されるなど、専門用語にも対応していて、翻訳時に信頼できるという点からもおすすめです。

書籍で調べる

翻訳作業において、書籍を使った情報検索は非常に効果的です。現地の本を調達するのが難しい場合でも、以下の方法で情報を得ることができます。

電子書籍を購入する

『RIDIBOOKS』を利用すれば、メールアドレスと海外発行(日本で発行)のクレジットカードで会員登録が可能で、現地の価格で韓国の電子書籍を購入し、すぐに閲覧できます。

現地の本を購入する

少々高くついてしまいますが日本にいながら韓国の本を購入するのも一つの手です。購入方法は以下の記事にまとめてありますのでご参考になさってください。

日本の図書館のデジタルサービスを活用する

多くの日本の図書館では、韓国語の書籍や雑誌をデジタル版として提供している場合があります。
特に大学図書館や公共図書館では、韓国の学術的な資料や書籍をデジタル化して公開していることがあるので、オンライン図書館サービスをチェックしてみましょう。
国立国会図書館サーチ国会図書館の個人向けデジタル化資料送信サービスを使うのが便利です。

韓国の学術論文のオンラインサービスを利用する

韓国の学術論文は、韓国の文化や歴史、専門的な知識を深めるために非常に有用です。翻訳作業中にわからない専門的な語句や背景知識を調べるために、以下のオンラインサービスを活用するのが効果的です。多くのサービスでは会員登録を行うことでアクセスできますが、全文閲覧は有料の場合が多い点に注意が必要です。

KISS (Korean Studies Information Service System)

KISSは韓国の学術論文を集めたオンラインデータベースで、韓国語で書かれた論文や研究記事を検索することができます。特に韓国の文化や社会、歴史に関する情報を得るのに適しています。

ホームページ

DBpia

DBpiaは韓国の学術雑誌や論文、研究報告書を提供する大手学術データベースです。多くの分野にわたる学術論文が検索でき、特に学術的な用語や背景知識を深めるために役立ちます。

ホームページ

RISS (학술연구정보서비스)

RISSは韓国の学位論文や学術論文を提供する国立のオンラインサービスです。

ホームページ

何度も推敲する(2次、3次翻訳)

一通りの翻訳やリサーチが終わった後は、読みやすく自然な日本語に仕上げるために、2次翻訳以降で何度も推敲することが必要です。

推敲時のチェックポイント:
原文の意味が正しく伝わっているか。
読みやすい日本語になっているか。
登場人物の一貫性が保たれているか。
不必要な直訳がないか。

専門家や編集者の意見を取り入れる(3次翻訳)

翻訳が一通り完成したり、2次翻訳以降の段階で、他の翻訳者や編集者の意見を取り入れることで、さらなる品質向上が期待できます。私の場合、インハウスで勤務していた時は編集者と会議を行い、後で問題点が発生しないように編集者の意向に沿って入稿できるように努めていました。

方法:
翻訳者同士で原稿を共有し、フィードバックをもらう。
出版社の編集者や著者のレビューを受ける。

最後に入稿して翻訳作業が終了となります。編集者が原稿が渡ったあとも逆監修作業等もあるので、入稿したら完全に作業が終わるわけではありませんが、ひとまず入稿をゴールとして解説してきました。

出版翻訳は、言語スキルだけでなく、作品に対する深い理解や創造力も求められる仕事です。時間をかけて練習を積み、読者に感動を届ける翻訳を目指すといいでしょう。
本日も最後までご覧いただきありがとうございました。

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