書籍の翻訳を行う出版翻訳者。訳者として名前が出るので、出版翻訳者に憧れる方も多いのではないでしょうか。しかし、求人サイトを見ても募集はなかなか見つからないのでは?では、どうすれば出版翻訳者になれるのでしょうか?
ここでは、その疑問に応えるべく、出版翻訳者になる方法をご紹介します。(最終更新日2025年1月28日)
出版翻訳者のしごととは
出版翻訳について
出版翻訳とは、書籍や雑誌の翻訳を行う仕事を指し、その仕事をする人を出版翻訳者と呼びます。翻訳する書籍の種類は、小説、自己啓発書、エッセイ、児童書、漫画など多岐にわたります。
日本の書店に並んでいる翻訳書籍を見ると、英語の翻訳書籍が依然として大きな比率を占めています。しかし、近年の韓国小説の人気や、先日ハン・ガン作家がノーベル文学賞を受賞したことを受けて、韓国書籍の需要は今後増加すると予測されています。
一方、韓国では日本よりも翻訳書籍の比率が高く、特に日本の書籍が占める割合は約4割と圧倒的です。つまり、日本以上に出版翻訳者の需要が高いということです。
出版翻訳というと韓国語書籍を日本語に訳して出版するのが一般的ではありますが、私のように日本語の本を韓国語に翻訳する翻訳者になることも可能です。日本語ネイティブにとってはハードルが高い部分はありますがかもしれませんが、挑戦してみる価値は十分あります。
雇用形態と収入
出版翻訳の雇用形態
映像翻訳や産業翻訳と同様に、出版翻訳もフリーランスとして働くのが一般的です。そして、通常日本語ネイティブであれば韓国の本を日本語に翻訳します。私のように珍しいケースで、出版社でインハウス(社員)として出版翻訳(日→韓)というケースもありますので、インハウスや日→韓の出版翻訳の仕事もなくはありません。ただし稀なケースではあります。
出版翻訳者の収入
フリーランスの出版翻訳者の場合、収入源は本の印税です。翻訳者の経歴や実力により異なりますが、一般的に翻訳者に支払われる印税は本の定価の5~8%程度です。基本的には、初版の発行部数×本の定価×印税が収入となります。
例えば、翻訳家の印税が6%で、定価1,500円の本を初版で3,000部印刷した場合、1,500×3,000×6%=270,000円が翻訳者の収入となります。
本の売り上げが好調で2版が印刷されれば、翻訳者にはさらに印税が入ります。
日本では印税で支払われるケースが多いですが、韓国では書籍の翻訳を文字数単価で外注する出版社もまだあります。
この場合、例えば翻訳文の単価が400円で、200字詰めの原稿用紙を1,500枚翻訳した場合、400×1,500=600,000円が翻訳者の収入となります。ただし、本が人気で増版されても、翻訳者に追加でインセンティブ支払われることはありません。
わたしの場合はインハウスだったため、固定給。そして本がたくさん売れてもボーナスもちろんありませんでした涙
出版翻訳者のメリットとデメリット
出版翻訳者になってみて感じたメリットとデメリットをまとめてみました。
【メリット】
大好きな本と韓国語に毎日触れられる
これが一番大きなメリットでした。本が好きで、語学力が生かせる点では本当に楽しく仕事ができました。出版翻訳は直訳ではなく、目指す言語で自然な表現に翻訳する必要があるため、翻訳するのが難しい部分に苦しむことも多いですが、その分翻訳を通して表現力が格段に向上したと実感しています。
自分の翻訳した本が書店に並ぶ

これも翻訳家としてのモチベーションを高める要素のひとつですよね。ある日、キョボ文庫に行った際、平台に私が翻訳した本がなんと4冊も積まれていたことがあり、その時は本当に嬉しかったです。実際に訳書を手に取っている方を見かけることもでき、こうした光景を目の当たりにすると、自分が誰かの役に立っていのだと肌で実感できます。書籍を販売しているサイトのレビューでも、それを感じることができるので、映像や産業翻訳よりも、人々に喜ばれているという感覚をより強く実感できる職業だと思います。
【デメリット】
本に自分の名前も出るし、書店に自分の訳書が並ぶなどのメリットがある一方で、デメリットも少なくありません。
書籍などでは出版本社者に関しての良いこと、魅力を中心に構成されています。しかし、現実を知ったうえでそれでもなりたいという覚悟が必要だと思います。ですので、少し落胆する内容になるかもしれませんが、ここではあえてデメリットの方が多い構成にしています。
収入が安定しない
出版翻訳家の大多数はフリーランスです。売れっ子の人気翻訳者であれば、途切れなく仕事が入るでしょうが、それほどの知名度がない場合、途中で仕事が途切れる可能性も十分あります。そのため、出版翻訳一本でやること自体が大変です。
収入が入るまでの期間が長すぎる
基本的に翻訳者には、本が出版されてから翻訳料が支払われます。筆者が出版社で働いていた経験から言うと、翻訳原稿を編集者に渡してから本が出版されるまでには、平均して6ヶ月以上の期間が必要でした。したがって、翻訳期間が2ヶ月だとした場合、以下のような流れになります。

あくまで例ですが2月に入稿した場合、翻訳料が入るのは8月以降になります。つまり、その間の生活費はあらかじめ確保しておかなければなりません。
しかし、これを事前に知っておくのと知らないのでは、後々大変なことになると思うので、あえてここに書いておきました。
著作権エージェントの台頭
下で説明する「デビューすためにレジュメを作って出版社に売り込む作業」がありますが、個人出版しゃにきっかく提案する前に話題や人気の書籍を著作権エージェントが出版社に紹介し版権がなくなってしまうケースも多々あります。
韓国の場合はエージェントが出版社に売り込み、本が出版される割合が非常に高く、翻訳者がレジュメを作って出版社に売り込むケースは全体の2割ほどにしかないそうです。幸い日本はそれよりも翻訳者が企画するパーセンテージは高いです。
持ち込み企画を受け付けてくれる出版社がすくない
以前は『あなたも出版翻訳者になれる』という本が出版されていて、その中に企画持ち込み可能な出版社一覧が掲載されていました。しかし、今現在もその一覧にある出版社が企画をも仕込めるかというと、企画持ち込みNGの会社が多々あります。
出版社のホームページを見ると企画持ち込みNGの割合がかなり高いので、企画の持ち込める出版社を探す作業も簡単ではありません。
出版翻訳者に必要なスキルとは

ここでは翻訳者として必要なスキルを紹介します。
語学力+時事
翻訳の仕事ですから、当然語学力は必要です。しかし、語学力を身につけるのであれば、ニュースなどを見て、該当する国の時事や文化に常に触れておくことを習慣づけるのが良いと思います。
日本語の表現力
本を読んで内容をしっかり理解したとしても、アウトプットが不十分であれば良い翻訳にはなりません。読者は訳文のみでその本に触れるため、読者目線でわかりやすく、自然な日本語に訳す必要があります。そのため、常日頃から外国語だけでなく、日本語にも興味を持ち、言葉のヴァリエーションを増やす努力が求められます。
日頃から興味のある本を使って翻訳の練習することも大切です。翻訳をすることでどのような部分が訳しずらいかなど、様々な気づきがあるはずです。できれば本1冊を丸ごと翻訳してみるのがおすすめです。
読解力
普段から本を読む習慣があるといいと思います。先ほど日本語の表現力が必要だと言及したので、日本語の本も常日頃から読んでおくといいでしょう。おすすめは翻訳本と原書を両方読むこと。外国語の読解力もつきますし、翻訳本を読むことでどのように翻訳されているか勉強にもなりますし一隻二鳥です。
また、翻訳の関連書籍を読んで翻訳ついて勉強することも大切です。私のおすすめ本を下の記事でまとめてあります。
スケジュールの管理
書籍の翻訳をしているとひと月以上要することが多いと思いますし、小説であれば3か月くらい時間を要することもあるでしょう。そのためスケジュール管理能力は必須です。出版社にいたとき、外注のフリーの翻訳者の方で翻訳の質はいいけど締め切りを守らない方がいて、担当者がもう仕事は任せたくないと怒っていたことがありました。締め切りを守ることは非常に重要であり、基本ですので、スケジュール管理ができない翻訳者には仕事が回ってこないと思っておいた方がいいでしょう。
出版翻訳者になる4つの方法
レジュメを作って出版社に持ち込む
新人の場合、このパターンでデビューをする場合が多いと思います。自分で翻訳したい本を探し、レジュメを書いて出版社に持ち込む方法です。私はインハウス時代から、社内で良い本があればレジュメを作成し、版権担当者に提出していました。
英語の本に関しては翻訳エージェントが関わることが多いですが、韓国書籍に関しては、まだ翻訳者が本を発掘する余地があります。新人が採用されるケースは少ないのが現状ですが、諦めていては何も始まりません。
本の探し方とレジュメの書き方については、こちらをご参考ください。
出版エージェントについてはこちらの記事をご覧ください。
スクールなどに通って人脈を作る
通学、オンラインにかかわらず、さまざまな翻訳スクールに通い、翻訳の実力を高めると同時に人脈を作り、デビューを目指す方法です。
翻訳スクールに関しては、こちらもぜひ参考にしてください。
オーディションや翻訳に応募する
翻訳オーディションを受けて、『合格→デビュー』という方法です。英語がメインですが、定期的に「トランネット」ではオーディションが行われているので、要チェックです。韓国語に関しては、オーディションは非常にまれですが…
韓国語の場合、オーディションではなく、毎年開催されている翻訳コンクールをきっかけに足を踏み入れることができる事例もあります。翻訳の練習にも最適ですので、おすすめ。下の記事で紹介しています。
求人サイトで探す
まれなケースですが、インハウスで雇われることもあります。私は韓国在住なので、韓国の出版社で出版翻訳(日本語→韓国語)や、日本語のサンプル版の作成(翻訳)などを担当していました。根気よく求人サイトを探していると、普段見かけないような求人に出会うこともありますよ!
筆者が出版翻訳者になるまで
筆者が出版翻訳家になったきっかけはコロナでした。コロナ前までは、某旅行サイトでコンテンツの企画やライティングの仕事をしていましたが、旅行業はコロナの影響を大きく受け、仕事がなくなってしまいました。
当時、旅行業の仕事はほとんどなく、翻訳業務の経験(旅行会社や観光案内所での翻訳、ゲーム翻訳)を生かして、翻訳の仕事を探してみました。そんな中、求人サイトで翻訳部門を新たに立ち上げる出版社の求人を見つけました。韓国の出版社で、日本語から韓国語に翻訳する仕事だったため、ダメもとで履歴書を送りました。すると、筆者が書いた韓国語の履歴書とサンプル翻訳が評価され、出版翻訳家としてデビューすることができました。
全然大それたものではありませんが、下の記事でここまでの道のりを紹介してあります。
きっかけは意外なところにありましたが、挑戦しない限り何も実現しません。出版翻訳は難しいと言われていますが、きっかけ一つでデビューできる可能性はあります。ですので、挑戦するというマインドが重要だと思います!
以上、出版翻訳の仕事について、メリット、デメリット、翻訳家になる方法についてご紹介しました。
一見難しそうに感じるかもしれませんが、興味と情熱があれば、決してなれない仕事ではないと思います。すでに触れたように、特に韓国語に関しては今後の需要が期待されている分野です。ぜひ、あこがれの出版翻訳者に挑戦してみてはいかがでしょうか?
本日も最後までご覧いただき、ありがとうございました。








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